一夜明けて
足を肩幅に開いて、腕はだらんと垂らす。
腕を振る。
目はどこも見ていないが、実はどこか一点を見ているのかもしれない。
腕を振る。
信号が青になり、スクランブル交差点が人で埋まる。
腕を振る。
コルチカムが咲き乱れ、香りが鼻をつく。
腕を振る。
電車が通り過ぎる音がする。振動が足に伝わる。
砂漠に横たわり空を見上げる。オリオン座は蠍から逃げているのかもしれないが、蠍を追いかけているのかもしれないじゃないか。
ミンタカが緑に光る。砂はすべて消えた。
歯車はどれ一つとして噛み合っていない。なのに時計は正しい時刻を指している。秒針の音に懐かしさを感じる。総武線は千葉駅を通過するとふわりと宙に舞い上がり、傷だらけの蛹へと姿を変えた。