開け閉め

力強く閉めると反動で数センチ開く

競技クイズとゼルダBotWの話-クイズ王は無知か?

ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルドを購入するとこの記事は5倍読みやすくなります】

 

 

ありゃ神ゲーだ。ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド。WiiU版を持ってる。Splatoon神ゲーだったけど、ゼルダを遊んでるときの絶え間ないワクワクは格が違う。だけど何が楽しいのかって問われたら……説明には時間がかかる。あのゲームの楽しさを引き出すメカニズムは至極複雑なので、全体を書こうとすると結構文章量を食うのだ。

そこでゼルダに関しては実際に買って遊んでいただくとして、

競技クイズの話をしようと思う。

 

「クイズ王って、いろんな物の名前を知ってるけど生きた知識を持ってないよね」

「そんなに色々世界遺産トリビア知ってて何になるの?実際に行くわけでもないのに」

「知識だけじゃだめ、もっと発想力をもたなくちゃ」

 

 死ぬほど見た。具体的には自分の出た高校生クイズエゴサしまくったときとか小西ひろゆきがバズったときに結構見た。あと一時期の東大王からもそんな雰囲気が滲み出ていた。ご当地グルメとかサービスエリアとかの問題を出しまくり、東大王の3人に「机上の知識だけの人」という印象を植え付けにかかっていたことを鮮明に記憶している。

※ちなみに、競技クイズ経験者なら絶対に取れる問題(ベタ問)というものが存在し、番組作成サイドもそれは把握している。なのでクイ研出身者なら東大王を見ていても、あっこの問題東大王に取らせるつもりだな、というのは手に取るようにわかる。 

 こういうのを見るたんびに、クイ研出身で競技クイズ経験者であるところの僕はちょっとずつ傷ついているのである。

 そこで、あくまで僕の主観的な話だが、競技クイズプレイヤーの知識への向き合い方を書かせてほしい。

 まずは先程購入したゼルダの伝説 ブレスオブワイルドを起動していただこう(まだ購入していない場合は脳内に体験版をインストールしてみよう)。今作のリンクが冒険するハイラルの大地には、15本の「シーカータワー」と、120個の「ほこら(祠)」が立っている。シーカータワーは周辺の山々より目立って高く、夜でも光る目立つ建造物。祠はシーカータワーよりずっと小さくて、夜は光るけれど、少し見つけにくいところに隠れている。

え?イメージできない?ゼルダ買えって!

ハイラルに降り立ったばかりのリンクは、地図のデータを全く持っていない。そこでまず間近にある「シーカータワー」に足を運ぶ。すると周辺の詳しい地図がシーカーストーン(リンクの持つタブレット端末みたいなもの)にインストールされ、近辺の探索ができるようになる。しばらく探索をしていると、やがて「ほこら」を見つける。ほこらの内部には謎解きやアスレチック要素を含んだミニダンジョンが待ち受けていて、踏破すれば「克服の証」がもらえる。これを4つ集めるとリンクの体力・がんばりゲージ(スタミナ)が強化でき、さらに遠くまで冒険できるようになる。そして冒険の先でまたシーカータワーを見つけ、祠を探し、体力とスタミナを増やす。このサイクルがこのゲームの基本になっている。

 

 クイズがどうとか言っていた奴が急にゼルダの話をし出して、戸惑った人もいるかもしれない。だが、このサイクルは知識の獲得と全く同じものであるのだ。

 

 この世の中は、僕らの知らないことに溢れている。言うなれば地図はまだまだ白紙だ。そんな中、新しい趣味や学問に興味を持ってみるとしよう。その分野について軽くググってみたり、入門書を読んでみたりすると、その分野"について"学ぶことができる。これで展望が開ける。シーカーストーンに地図がインストールされたわけだ。あなたは次に何をしてみようか考えてみる。それが学問ならその講演会に行ってみたり、それが趣味なら教室に通ったり、教本を買ったりする。そうしてどんどんその分野"を"学んでいく。祠は次々に踏破され、どんどん成長していく。さらに深めようと思えば、コログを探すこともできる。コログは必ずしも知識ではない。新しいマインドセットであったり、他の人たちとの繋がりであるかもしれない。(コログについての説明は省く。読者は全員ゼルダを買うから説明は不要なのである)

 僕はこの、シーカータワーを探し、祠を踏破し、コログを見つけるステップが学問と呼ばれるものなのだろうと思っている。自分の知らないことが見つかる楽しさ、知識を獲得する過程での紆余曲折の楽しさはやはり「知る」「学ぶ」ことの醍醐味であると思うのだ。そしてゼルダBotwは、それを完全に再現しているとも思う。

 では、我々クイザー(クイズをする者の意)はそれをどうやって享受しているのだろうか。答えは簡単、シーカータワーだけ見つけまくってマップデータを獲得し倒しているのである。ゼルダを遊んだ人ならわかると思うが、この作業、法外に楽しい。というかそもそも「未知」って楽しいのだ。そしてタワーの頂点にシーカーストーンをセットすると、今までなんとなく歩いていた場所がどこだったのか、水場は、村はどこにあるのか…そんなことが一度にシーカーストーンに流入する。

そうしてクイザーは幅広い分野"について"学ぶ。しかし、クイズの素晴らしい点はそこで終わらないことであると思う。クイズは正式なルールが策定されていないから、どんなにニッチでディープな分野だろうと「出題」できる。ゆえにクイザーには出会いが多い。人間とのではなく、新しくて未知の学問や趣味、人生との出会いだ。そんな出会いを通して気になる分野があれば、少し周りを探索して祠を探してみる。得意ジャンルの誕生だ。(ちなみに僕はお笑い芸人には結構強いと自負している)さらに知りたい分野があれば、コログを探索することになる。今まで無かった知識や発見に驚けるはずだ。そうして得た知識をクイズに加工してみんなに出題すれば、今度は皆が「未知」に目を輝かせてシーカータワーに来てくれる。ある意味布教ともいえる。

 

そんな感じで、クイズは新しい知との出会いを手助けしてくれる。さらに、クイザーには多種多様なヒトがいる。各々生きてきた人生は当然違って、持っている知識も驚くほど幅広い。みんなが出題者になれて、みんなが回答者になれる。だからクイズは「何を学んだか」だけでなく「どう生きたか」すらも交換できるツールだと思う。ゆえにこれから大学生になる人にとって、競技クイズは最適な趣味だと言えよう。

 

4/7(土),14(土),22(日)に、東京大学クイズ研究会(TQC)の新歓がある。東大と言ってもインカレサークルなので他大生もたくさん参加している。来よう。無論、行く大学にクイズ研究会があるならそれに行くのも良い。

いずれにせよ、したい事がハッキリしていないのならばクイ研に入るべきだ。人生を変える知識との出会いをお約束しよう。あと、暇な時間の使いみちがハッキリしていないのならばゼルダを買うべきだ。落単をお約束しよう。